ルアーフィッシングにおける必需品であるリール、これは道具である以上、いずれどこかしらに不具合が出てくる場合があります。
特に、サーフフィッシングはショアの釣りの部類の中でも割と過酷な状況で使うので、砂や海水による影響も受けやすくリールに不具合が出やすいのではないかと思います。
例えばハンドルノブの回転が悪いとか、内部で異音がするとか、ハンドルが回らないとか簡単に対処できるものからオーバーホールが必要なものまで様々です。
色々な不具合があると思いますが、その内、使用過程で状態が変化し本来の役割を果たせなくなるパーツ、すなわち消耗品に起因するものもあります。
今回の記事ではリールに発生した消耗品に起因する3つの不具合の紹介と、その際の対処について紹介したいと思います。
サーフフィッシング用に所有するリール
私が使用するスピニングリールは2台
「18ステラ」をメイン、「17ツインパワーXD」をサブとして現在使用しています。
※この記事で紹介する3つの不具合については、18ステラに発生した事例になります。
※18ステラは2020年5月にc5000XGのモデルを購入、普段のヒラメ釣りでは4000XGの替えスプールを取付し使用しています。
Case.01「ドラグ調整時にカチカチ音がしない」
どんな不具合か?
釣行前にはドラグ調整を行います。
そのために、スピニングリールの上部に位置するドラグノブを回すことでドラグの強さを調整します。このドラグノブを回すと、内部でカチカチカチッと小気味良い音がするのはご存知だと思います。この音を聴いてどれくらい回したかの判断に使うのだと思いますが、ある日このカチカチ音がしなくなってしまいました。
回すとただぐーッとドラグがキツくなっていく感覚だけでいつもと違うなんとも気持ち悪い感じです。
原因:ドラグノブ内のバネ破損
ドラグノブを外し、分解してみます。
まず、ドラグ内への水の侵入を防ぐゴムパッドを手で外します。次に、中央の部品を止めるストッパー(銀色の部品)を外します。
これで中央の部品が外れます。外すとこのような感じです。上記画像右の部品には、小さな半球が入るような凹みが連なった円型の溝があります。
この溝には画像左の部品の赤の破線で囲んだ部品がはまるようで、穴の中に収納されています。この部分を取ってみました。すると駒状の形状をした部品とバネが入っており、バネの方は完全に破断していました。
このドラグノブによるカチカチ音は、ドラグノブ内の駒状の部品が半球状に凹んだ溝から溝へ移動することで鳴るもので、駒状部品を溝側にバネで押さえ付けている必要があります。
しかし、バネが破断したことで溝側に押さえつけることができず音が鳴らなくなってしまいました。
バネを交換するだけなので、釣具屋かインターネットで取り寄せるためにリールの分解図を確認し、バネの品番を確認をしようとしたところ驚きの事実がわかりました。
このバネ単体の販売はしておらず、ドラグノブ一つ丸ごとでの部品購入でしか取り寄せできないとのこと。ちなみに値段は10000円越えです。
さすがにこのバネだけのためにドラグノブ新品購入などバカバカしいので、釣具屋経由でメーカー修理へ
修理期間は約3週間で、費用は無料でした。
しかし、この約5ヶ月後、ドラグノブを回すとまた音が鳴らなくなってしまいました。
再び、ドラグノブ内を見てみると今度はバネは破断でなく、ひしゃげてしまっていました。
また、この部品のために、修理に出し3週間近く到着を待つのもバカバカしいと思い自分で治すことに。
対処:ホームセンターでバネを購入・交換
ひしゃげたバネを計測すると、約2.8mm。ホームセンターへ行き探していると良さそうなバネが売っていました。
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素材は一般的なバネと同じくステンレス(SUS304)で強度、耐食性も優れています。少し径が大きいですが問題はないと判断し購入。
元々入っていたものと比べると、硬めで螺旋のピッチが多いような印象です。
これを適当なサイズにカット
ドラグノブのパーツの穴にはめてみるとピッタリでした。
螺旋のピッチが多いので前よりしっかり押してくれそうです。
組み直したドラグノブでカチカチ音を確認すると、元通り鳴ってくれました。
これに替えてから5ヶ月が経過しますが、今の所問題ありません。
再び破断したり、ひしゃげたりしても、まだまだ素材は残っているので数年は問題ないです。わざわざ時間を掛けてメーカー修理に出さず自分で治した方が時間の無駄が省けます。
Case.02「ドラグ設定が不安定になる」
どんな不具合か?
以前の記事、
この記事でも紹介しましたが、あらかじめドラグチェッカーを用いてドラグを正確に設定していたのに関わらず、ドラグがなぜかガチガチになっており魚の突っ込みに対しドラグが働かず、バラシてしまいました。
具体的に言うと、あらかじめ手元ドラグ1.5kgで設定していましたが、ファイト後に測定し推測すると2.5kg前後の強さになっていました。
また、釣行を続けていると、逆に1.5kgで設定したものが0.8kgと極端に弱くなったり、ドラグ設定が不安定になってしまうという現象が発生しました。
原因:ドラグワッシャーの破損
先ほどの記事の釣行後、スプールのドラグ部を分解するとすぐに理由が判明しました。
ドラグの根幹ともいえるフェルト製のドラグワッシャー(ドラグ座金)がボロボロになっていました。
これではまともにドラグ機能が働くはずがありません。
私は大体、一月に一回程度でドラグの清掃とグリスアップをしているのですが、前にそれを行った時「少しへたってきたなあ、まあ大丈夫か」とそのまま戻してしまいました。
圧倒的猛省…少しの妥協がとてつもない後悔を生むということを身を持って感じました。
対処:ドラグワッシャー購入・グリスアップ装填
ドラグワッシャーを購入するために、分解図を確認します。
18ステラ 4000XGのスプール内のドラグワッシャーは、部品番号0004が2枚と、0007が1枚という構成になっています。ちなみに、金額は1枚たったの165円です。
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STEP.01 ドラグパーツ洗浄
新品のドラグワッシャーを入れる前に、ドラグを構成するパーツを洗浄します。
そのためにパーツを分解していきます。
抜ケ止メバネ(部品番号0002)、小判座金(0003)、耳付座金(0005)、小判座金(0117)を取り出します。
分解して取り外したパーツは、適当な入れ物に入れ、ホームセンターなどで販売しているパーツクリーナーに漬けます。そして、キッチンペーパーや綿棒で劣化したグリスなどを取り除きます。
これで4つのパーツとスプール内の洗浄は完了です。
また、ボールベアリングの回転も悪いようなので、洗浄していきます。
ベアリング内はただパーツクリーナーに漬けるだけでは綺麗になりません。
そこで使用するのはこちらの道具を使用します。
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このABCホビーのベアリングリフレッシュセットは、ベアリング内の洗浄やグリスアップをするためのアイテムです(※やや入手難で、高額な転売品も多いので注意)。
ベアリングの洗浄のために、ボールベアリングを下の写真のようにセットし、パーツクリーナーを逆さにして押し込むだけで内部が一瞬で洗浄されます。
ベアリングも綺麗になりました。
最後に、スプール内もパーツクリーナーを使いつつ綺麗にします。
これでドラグパーツやスプール内の洗浄が完了しました。
STEP.02 ドラグワッシャーをグリスアップ、装填
ようやく、ドラグワッシャーをセットしていきます。
セットするドラグワッシャーを並べます。
部品番号0004と0007は見ての通り、大きさが異なります。
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内部にも浸透するようにグリスをフェルトに馴染ませます。
また、洗浄したボールベアリングに純正オイルも注入しておきます。
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これで装填前の準備は完了しました。
入れる順番を間違えないようにもあらかじめ正しく並べておきます。
※特に、ドラグワッシャーは0004と0007と2種類あるので順番には注意が必要です。
①ボールベアリング
これで、完了です。
新品のドラグワッシャーに変えたドラグは、以前のヘタったドラグワッシャーと全く異なります。ステラの滑らかなドラグ性能が戻ってきました。
もっと早めに変えておけばよかったと後悔です。
Case.03「高切れが頻発する」
どんな不具合か?
今年の10月くらいに高切れ(=道糸の途中でラインが切れること)が起きました。
ここ数年で久しぶりに発生したので印象に残っていました。
その時はPEの使用期間がいつもより長く、強度が下がっていたのが原因と考えていました(強度測定してもある程度、数値が下がっていました。)
しかしその後、新品のPEに変えた後に、向かい風のナイトサーフでテンションが掛かってない状態の時に1回、前項のCase.02で紹介した記事内で発生した高切れで1回。再び、新品のPEに変えた直後のサーフで、ブレイクにルアーがぶつかった際に掛かったテンションでも切れてしまいました。
原因:ラインローラー溝の損傷
さすがにこれは異常すぎるということで、タックルをよく確認していきます。
まず、ロッドのガイドの割れがないか、ベールアーム・スプールエッジが傷ついていないかをみます。
次に気になったのは、アームカム。
実は当時私が購入した18ステラのアームカムにはバリ?傷?がついていました。
私のだけというか、当時購入した時期に出回っていたロットの18ステラ4000XG・C5000XGのアームカムにはほぼバリがあったようです。周辺地域の釣具屋の18ステラをほとんど確認しましたが、大小のバリが必ずできていました。
ちなみに当時、
「最もラインに近い部分になるのにこれは…」と、SHIMANO(と販売店)に問い合わせると、何が問題ないのかわかりませんが「問題ありません」という反応しか返ってきません。
18ステラは現存するリールの中で最高峰のリールだと思いますが、このバリとSHIMANOの反応に関しては残念です。
確かに、購入してから1年半以上の間の使用してきて釣行には「問題ない」と思いましたが、アングラーに不安を与えるようなこのバリの存在はフラッグシップを冠するリールとしては「問題ある」と思います。
…少し話が脱線してしまいましたが、今まで釣行には問題なかったので、ここにきて突然問題を発生させるとは考えにくく、このアームカムのバリが原因としては一旦除外しました。
原因はなんなのか…リールをまた見回していると、ラインローラーに違和感を感じました。
なんと、ラインローラーの溝に裂けたような傷がありました。
保管時にラインを通したままにしておくと、触れた部分が腐食して傷がつくと聞いたことがありましたが、当然そんなことはしていませんし、釣行後は必ず水洗いをしています。
オーバーホールの時、ラインローラーを交換してまだ1年経っていませんが、ラインローラーに問題が発生していました。
このラインローラーの傷によってラインがダメージを受け、高切れが発生するようです。強くテンションを掛けてラインを通してみると繊維が切れます。これまで処分したラインを引っ張りだし確認したらラインのダメージが受けているのを確認できました。
ラインローラーの表面処理について
スピニングリールのラインローラーは、平滑性・腐食耐・強度などのために表面がメッキ処理されています。シマノのスピニングリールのラインローラーはステラを除きメッキ処理(種類不明)されていますが、ステラについてはDLCという表面処理がされています。
DLCはDiamond Like Carbonの略で、ダイヤモンドとグラファイトの中間構造を持つ硬質薄膜。硬質・平滑性・耐摩耗性・耐食性がより優れた表面処理だそうです。
対処:ラインローラー購入・グリスアップ装填
あのような傷がついたのでは交換しかありませんので、新品のラインローラーを注文します。
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STEP.01 ラインローラー周りの洗浄
新品のラインローラーを交換する前に、ラインローラー周りの洗浄を行います。
ラインローラーを挟むベアリングカラーやアームカム内側に残った古いグリスを綿棒とパーツクリーナーで拭き取っていきます。
STEP.02 ラインローラーをグリスアップ、装填
洗浄が終わったら、いよいよラインローラー周辺をグリスアップしていきます。
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これをベアリングカラーの溝とラインローラーの中央に充填していきます。
これで準備が完了です。
右から2番目の座金を忘れやすいし、ラインローラーの向きも間違えやすいので、間違えないようにあらかじめ取り付ける順番に並べておきます。
あとは順番に取り付けていくだけです。
交換後約1月半、今のところ問題はなく、高切れは一度も発生していません。
今後は日頃のメンテナンスや洗浄時によくよく確認するようにしていきます。
まとめ
道具である以上、使用期間が経つにつれて何かしらの問題が発生していきます。
この記事では消耗品に起因する3つのリールのトラブルを取り上げましたが、その中にはドラグワッシャーのようにヘタリに気づいた時点で、早めに交換していれば問題が起きなかったものもあります。また、ラインローラーについては予想はできませんでしたが、このような現象が発生するということで今後の良い教訓になりました。
他の方にも参考になれば幸いです。
この記事は以上になります。
最後までご覧いただきありがとうございました。